和菓子づくりが左右の脳を刺激する?脳科学と発達の視点から
- 一般社団法人こどもわがし協会
- 5月28日
- 読了時間: 4分
更新日:3 日前
和菓子づくりが「脳育」に?
和菓子づくりは、子どもたちの手指を動かす繊細な作業が続きます。練ったり、形を整えたり、色を混ぜたりといった工程を通じて、実は脳の発達にとても良い刺激を与えていることをご存じでしょうか?
「子どもが落ち着いて集中できるようになった」 「自分から最後までやり遂げる姿が増えた」――これらは教室での実体験でも多く聞かれる声です。なぜ手を使うことが脳に良いのか、その科学的な背景を見ていきましょう。
脳科学から見る「手を使う」ことの重要性
脳は大きく分けて「左脳」と「右脳」に役割が分かれています。
・左脳:論理的思考、言語、計算などを司る
・右脳:感性、空間認識、創造力をつかさどる
手指を使った細かな作業は、脳の前頭前野や感覚野を活性化させることが脳科学の研究で明らかになっています。特に、両手をバランスよく使うことで左右両方の脳が刺激され、情報処理能力や創造性の発達が促されます。
和菓子づくりの工程が脳を刺激する理由
和菓子づくりでは、
・ねりきり生地を「練る」ために手指を細かく動かし
・生地を「包む」「伸ばす」「形を整える」ことで空間認識力を使い
・色の組み合わせや季節感を意識しながら創造的に「デザイン」する
このように複数の脳領域を使う複雑な動作が連続するため、単なる遊びや工作よりも多層的に脳が刺激されます。
他のアクティビティとの違い
お絵かきや粘土遊びも脳を使いますが、和菓子づくりは「食べる」という目的が加わることで、五感すべてを使った体験となります。
また、日本の季節や伝統行事に根ざした題材であるため、文化的理解と情緒の発達にもつながる点が特徴です。
教室で見られる実際の変化
教室で継続して和菓子づくりを行うことで、
・集中力や持続力が伸びる
・作業記憶や手先の器用さが向上する
・自分で工夫して形を作ることで自己肯定感が育つ
という変化が見られています。これらは、子どもの学習能力や社会性を育てるうえで重要な力です。
専門家の見解・研究例
幼児教育の専門家や脳科学者も、「手指の巧緻性と脳の発達は密接に関係している」と指摘しています。特に、左右の手をバランスよく使う活動は、前頭前野の発達を促し、注意力や自己制御能力の向上に寄与するとされています。
家庭でもできる「脳育」和菓子体験のすすめ
家庭でも簡単な和菓子づくりを通して、脳の発達を促せます。例えば、
・ねりきりや三色団子など、簡単なものから始める
・作る工程を一緒に声かけしながら楽しむ
・季節や形にまつわる話を交え、感性を刺激する
これらの工夫で、親子のコミュニケーションも深まり、教育効果がさらに高まります。
右脳×左脳を育てる知的で感性的な体験を
和菓子づくりは、左右両方の脳をバランスよく刺激する活動として優れています。
「手を動かし、考え、感じる」一連の体験を通じて、子どもの発達に必要な集中力・創造力・自己肯定感が自然と育まれていきます。
伝統文化である和菓子を通じて、現代の子どもたちに必要な非認知能力の基盤を育てる教育の新しい形として、ぜひ注目してみてください。
参考文献・研究例
Diamond, A. (2013). Executive Functions.Annual Review of Psychology, 64, 135-168. 前頭前野の発達と自己制御(実行機能)に関する包括的なレビュー。手指の運動や巧緻性が自己制御能力の発達に関与していることが示されています。
Lebel, C., & Beaulieu, C. (2009). Longitudinal Development of Human Brain Wiring Continues from Childhood into Adulthood. Journal of Neuroscience, 29(38), 11700-11707. 脳の神経回路の発達と、特に左右の脳半球の連結が子どもの成長に伴って強化されることを示唆しています。手指を使った活動がこの連結を促す可能性があります。
Case-Smith, J. (2000). Effectiveness of Occupational Therapy for Children: A Systematic Revie American Journal of Occupational Therapy, 54(6), 484-491. 手指の巧緻性向上のための活動が、子どもの認知機能の発達に良い影響を与えることを示す実践的なエビデンス。
Michetti, C., et al. (2018). Hand Motor Skills and Cognitive Development in Preschool Children. Developmental Neuropsychology, 43(1), 1-15. 手の運動能力と認知発達の関連を具体的に調査し、バランスよく使うことで脳の発達を促す可能性を指摘。
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