AI時代を生きる子どもに必要な力と、練切づくりの関係
- こどもわがし教室 Mari Masuda
- 13 時間前
- 読了時間: 3分
「AI時代に求められる力とは何か?」という問いが改めて注目されています。
子どもたちが大人になる頃、今よりもっと社会のあらゆる場面でAIやロボティクスが活用されている――それは間違いありません。
その未来を見据えたとき、ただ知識を覚えるだけの学びでは、子どもたちは時代に取り残されてしまうかもしれません。
では、どんな力がこれからの時代に必要とされているのでしょうか?
「手を使う力」が奪われている今
2025年4月、ナショナル ジオグラフィック日本版サイトに掲載された記事には、こんな衝撃的なデータがありました。
「靴ひもを結べない」「ページがめくれない」「積み木で遊べない」――
子どもたちの“手を使う力(微細運動)”が年々衰えてきているというのです。
スマホやタブレットの普及により、手で物をつかむ・こねる・組み立てるといった「試行錯誤の遊び」が減少しています。
便利な道具によって、“指先で考える”という体験の機会が奪われているのです。
これは、ただ手先が不器用になるという話ではありません。
微細運動の発達と、脳の発達には深い関係があることが、近年の研究でわかってきています。
AI時代に必要な「非認知能力」
AIが得意とするのは、大量のデータを瞬時に処理し、正解を導くこと。
でも、正解のない問いに向き合い、他者と協力しながら粘り強く考える――
そんな「人間らしい力」は、これからますます重要になっていきます。
それは、たとえば以下のような力です。
•最後までやり遂げる力(やり抜く力)
•失敗しても立ち直る力(レジリエンス)
•人と協働する力(社会性)
•新しい発想を生み出す力(創造性)
これらは、テストの点数などでは測れないため、「非認知能力」と呼ばれます。
そして、この力を育てるには――実は「手を使う体験」がとても効果的なのです。
練切づくりが育てる、“手”と思考の力
私たちの子ども和菓子教室で毎月取り組んでいる「練切づくり」は、
手を動かしながら創造力や集中力を育む、まさに“AI時代の土台づくり”とも言える活動です。
子どもたちは、毎月テーマに沿った和菓子を、
•自分の手でこねて
•ちぎってまるめて
•形を整えて
•1人で仕上げていきます
この過程では、頭の中でイメージを描き、それを“指先で表現する”という高度な思考が働いています。
しかも、子どもたちは完成したときに、「見て!できたよ!」と自分の作品に自信を持ち、心からの笑顔を見せてくれます。
自己肯定感や達成感も、自然と高まっていくのです。
「和菓子」という日本文化を通して育む未来の力
和菓子は、ただ甘くてホッとするスイーツではありません。
そこには季節感、自然への感謝、美しい色彩や形のセンスなど、
日本が大切にしてきた精神が詰まっています。
そして、それを子どもたちの手で再現するという体験は、
彼らの感性や想像力を刺激し、深い学びへとつながります。
伝統と手仕事が、子どもの未来を育てる
AI時代だからこそ、“人間らしい力”がいっそう価値を持つようになっています。
子どもたちに必要なのは、正解を与えられることではなく、
自分の手で、心で、感じて考える経験です。
「和菓子づくりなんて、遊びでしょ?」
もしかしたら、そんな声もあるかもしれません。
でも私は、伝統と手仕事の中にこそ、
これからの時代を生きる力を育むヒントがあると信じています。
こねて、ちぎって、形をつくる。
一つひとつの手の動きが、子どもの内側にある創造力と集中力を目覚めさせていきます。
和菓子を通して育つ、未来を切り開く力。
それは決して“遊び”ではなく、「学びの本質」そのものだと、私は思います。

⸻
参考:日本経済新聞「手先が不器用になる子どもたち、「驚くべき異変」を専門家が危惧」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG017AO0R00C25A5000000/ (ナショナル ジオグラフィック日本版サイト2025年4月9日公開記事)
Comments