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AI時代を生きる子どもに必要な力と、練切づくりの関係

「AI時代に求められる力とは何か?」という問いが改めて注目されています。


子どもたちが大人になる頃、今よりもっと社会のあらゆる場面でAIやロボティクスが活用されている――それは間違いありません。


その未来を見据えたとき、ただ知識を覚えるだけの学びでは、子どもたちは時代に取り残されてしまうかもしれません。


では、どんな力がこれからの時代に必要とされているのでしょうか?



「手を使う力」が奪われている今


2025年4月、ナショナル ジオグラフィック日本版サイトに掲載された記事には、こんな衝撃的なデータがありました。


「靴ひもを結べない」「ページがめくれない」「積み木で遊べない」――

子どもたちの“手を使う力(微細運動)”が年々衰えてきているというのです。


スマホやタブレットの普及により、手で物をつかむ・こねる・組み立てるといった「試行錯誤の遊び」が減少しています。

便利な道具によって、“指先で考える”という体験の機会が奪われているのです。


これは、ただ手先が不器用になるという話ではありません。

微細運動の発達と、脳の発達には深い関係があることが、近年の研究でわかってきています。




AI時代に必要な「非認知能力」


AIが得意とするのは、大量のデータを瞬時に処理し、正解を導くこと。

でも、正解のない問いに向き合い、他者と協力しながら粘り強く考える――

そんな「人間らしい力」は、これからますます重要になっていきます。


それは、たとえば以下のような力です。

•最後までやり遂げる力(やり抜く力)

•失敗しても立ち直る力(レジリエンス)

•人と協働する力(社会性)

•新しい発想を生み出す力(創造性)


これらは、テストの点数などでは測れないため、「非認知能力」と呼ばれます。

そして、この力を育てるには――実は「手を使う体験」がとても効果的なのです。


練切づくりが育てる、“手”と思考の力


私たちの子ども和菓子教室で毎月取り組んでいる「練切づくり」は、

手を動かしながら創造力や集中力を育む、まさに“AI時代の土台づくり”とも言える活動です。


子どもたちは、毎月テーマに沿った和菓子を、

•自分の手でこねて

•ちぎってまるめて

•形を整えて

•1人で仕上げていきます


この過程では、頭の中でイメージを描き、それを“指先で表現する”という高度な思考が働いています。


しかも、子どもたちは完成したときに、「見て!できたよ!」と自分の作品に自信を持ち、心からの笑顔を見せてくれます。


自己肯定感や達成感も、自然と高まっていくのです。




「和菓子」という日本文化を通して育む未来の力


和菓子は、ただ甘くてホッとするスイーツではありません。

そこには季節感、自然への感謝、美しい色彩や形のセンスなど、

日本が大切にしてきた精神が詰まっています。


そして、それを子どもたちの手で再現するという体験は、

彼らの感性や想像力を刺激し、深い学びへとつながります。




伝統と手仕事が、子どもの未来を育てる


AI時代だからこそ、“人間らしい力”がいっそう価値を持つようになっています。

子どもたちに必要なのは、正解を与えられることではなく、

自分の手で、心で、感じて考える経験です。


「和菓子づくりなんて、遊びでしょ?」

もしかしたら、そんな声もあるかもしれません。


でも私は、伝統と手仕事の中にこそ、

これからの時代を生きる力を育むヒントがあると信じています。


こねて、ちぎって、形をつくる。

一つひとつの手の動きが、子どもの内側にある創造力と集中力を目覚めさせていきます。


和菓子を通して育つ、未来を切り開く力。

それは決して“遊び”ではなく、「学びの本質」そのものだと、私は思います。

教室では、3歳から小学6年生までひとりで仕上げる
教室では、3歳から小学6年生までひとりで仕上げる




参考:日本経済新聞「手先が不器用になる子どもたち、「驚くべき異変」を専門家が危惧」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG017AO0R00C25A5000000/  (ナショナル ジオグラフィック日本版サイト2025年4月9日公開記事)

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